最近、HSBC中国のネットバンキングやモバイルバンキングを利用しようとして、違和感を感じることが増えています。
それは、例えば、以下のようなことに対してです。
1.PCのネットバンキングにログインしようとすると、「当局の要請により、MACアドレスのデータを収集し報告する必要があるので、そのためのアプリをインストールしてください」とのメッセージが表示されるようになった。
2.アプリのモバイルバンキングを使用しようとすると、かなりの頻度で「利用規約」と「プライバシーポリシー」の改訂がなされ、都度同意をしないとアクセスできない。
3.昨年くらいから、アプリのモバイルバンキングを使用しようとすると、通信環境に問題はないはずなのに、「コネクトエラー」になってしまい、アプリが起動しない。
1については、このようなことを要求されて気持ちよく感じる方は、もちろんいないでしょう。
私は特にネットワーク技術に詳しいわけではありませんので、調べてみたところ、MACアドレスとは、PCやルーターなどのネットワーク機器に付与されたユニークナンバーとのことでした。
このMACアドレスから直接個人を特定するようなことはできないようですが、MACアドレス認証型の無線LANなどを使用している場合には、そのMACアドレスが分かれば、ネットワークに侵入されてしまうリスクがあるそうです。
今のところインストールをしなくても、なんとかネットバンキングは使えていますが、その利用目的も不明なまま、このような情報を中国の金融当局に渡してしまうことは、できる限り、避けたいところです。
2については、改訂が頻繁にあること自体は、特に問題ではありません。問題なのは、その中身です。
「利用規約」や「プライバシーポリシー」の改訂は、よくある話ですし、ほとんど内容を確認することなく同意される方も多いと思います。
一方で、こちらも中身をよく読むと、あらゆる個人情報やシステムデータが、中国の当局に吸い上げられる可能性があることが分かります。
中国銀行(BOC)などでは、ネットバンキングの利用にあたって、このような確認を求められたことは、ほとんどありません。
もちろん、確認がないからといって、中国銀行(BOC)が当局への報告を怠っているはずもなく、黙って行っているだけであろうことを考えると、むしろ、都度確認を求めるHSBC中国の方が、良心的なのかもしれませんが、それでも、あからさまに情報が吸い上げられることに対して、同意を重ねるには、勇気が必要です。
3については、原因が分かりました。
理由は不明ですが、どうやら、楽天モバイルの回線を使った場合、その周波数帯からのアクセスを拒否しているようで、ソフトバンク系など他の回線を使えば、アクセスできました。
原因が分かり、代替策もあるとは言え、いつなんどき日本からのアクセスが、全面的に拒絶されることがあっても不思議ではないと感じさせる現象でした。
上記のようなことが重なると、HSBC中国のネットバンキングやモバイルバンキングにアクセスすることをためらいがちになりますし、もっと言えば、これらをこのまま使い続けることに対するリスクを考えるようになります。
HSBC中国自身も「これらのシステムは、中国在住者のための仕組みで、国外在住者の利用については、なんら保証はない」と謳っていますし、そもそも、リスクを取ることなく中国の仕組みを安全に使い続けることなど可能なハズもなく、そろそろ、そのあたりを冷静に見極めなければならないように思います。
既に私は、大陸の金融機関に置いていた資産は、概ね引き上げており、万が一、資産にアクセスができないという状況が生じても、最悪あきらめがつかないわけではないのですが、完全な撤退も視野に入れなくてはならないのかもしれません。
昨今、中国発の越境ECや動画投稿アプリなども、深く考えずに利用される方が増えているようですが、あらゆる個人情報やデータが抜かれ、それがどのように使われるかわからない怖さがあるという点では同様です。
心配し過ぎという声もあるかもしれませんが、長く中国を見てきた身としては、やはり、そのあたりのリスクは無視できません。
資金をあらかた引き上げてしまい、中国への渡航も当面考えられない今の私にとって、中国の口座を維持し続けることは、得るものとリスクが釣り合っていない状況と言ってもよく、完全撤退は、時間の問題ということになりそうです。