このブログでBOOM証券のことを記事にするのは初めてですが、BOOM証券に口座をお持ちの方は、先月、「Monex BOOM Securitiesから、BOOM Securitiesに社名を変更します」というメールを受け取られたのではないでしょうか。
これは、当然のことながら、単なる社名変更ではありません。
頭に付いていた「Monex」の文字が消えたことからも分かりますが、マネックスグループが、BOOM証券の全株式を売却し、そのグループ傘下ではなくなったことによる対応です。
私も全く気付いていなかったのですが、今年の6月には、既に以下のとおり、株式売却のアナウンスがなされていました。
https://www.monexgroup.jp/jp/news_release/irnews/auto_20240621533807/pdfFile.pdf
BOOM証券がマネックスグループの傘下ではなくなったという事実は、日本人顧客にとって、望ましい話ではありません。
元々BOOM証券は、1997年に創業し、一つのプラットフォームから世界中の市場にアクセスできるという画期的な仕組みを売りにしてきた会社でした。
一方で、当時の位置づけは、スタートアップ企業に近しく、上場会社のように経営状況や財務状況などが開示されることもなく、会社としての信頼性については、疑問符がついてもおかしくない状況だったと言えるでしょう。
そんな中、2010年に日本のマネックスグループが、BOOM証券を子会社化したことで、BOOM証券という会社自体の情報量は乏しくとも、信頼できる後ろ盾ができたことになり、BOOM証券を利用しようとする日本人にとっては、大きな安心材料になったはずです。
今回は、その拠り所を失ってしまったわけですが、マネックスグループが発表した資料をよく見てみると、懸念はさらに深まります。
1.経営状況および財務状況
今回の発表があったことで、初めてBOOM証券の経営状況や財務状況の一端を知ることができました。
限られた時期の限られたデータですので、明確なことは分かりませんが、少なくとも2021年3月期から2023年3月期にかけて、売上も利益も大きく減少していることが分かります。
この落ち込み方は、かなり顕著で、赤字にこそなっていないものの、数字だけ見れば、不安を感じさせる内容です。
2.売却先
資料によると、売却先は、「Ignition Holdings Limited」という香港の会社です。
ネット上で調べてみたところ、この会社に関する情報はほとんどなく、得体の知れない投資会社だろうとしか推察のしようがありません。
もちろん、ここでいたずらに不安を煽るつもりはありません。
ただ、「BOOM証券の親会社は、日本のマネックスグループだから、安心だ」という漠然とした信頼感を背景にBOOM証券を使っていたという方は、その拠り所は、既に失われているということは、認識しておくべきでしょう。
HSBC香港が、日本居住者からのオンライン投資を締め出した際も、BOOM証券があることで、その影響は軽微だと考えていましたが、環境は刻々と変化していることを痛感します。
最近の記事を見返しても、なにやらネガティブな記事が多いことに気づき、私としても本意ではないのですが、それだけ日本人を取り巻く環境(アジア圏の金融機関を使うという意味での)が厳しくなっているのだと思います。
このような環境さえ、日本という国の行く末と重ねてしまうのは、考えすぎでしょうか。