【要注意】日本居住者は、HSBCでのオンライン投資が不可能になった模様

オフショアでHSBCを利用する者にとって、想像もしていなかったような事態が起きていますので、記事にしたいと思います。

HSBC側(特に香港)が正式なアナウンスをしていませんので、その背景も運用の中身もはっきりしたことは言えませんが、少なくとも日本の居住者は、HSBC香港でも、HSBCシンガポールでも、オンラインを通じた新たな投資はできなくなったようです。また、HSBC香港のMastercard Debit Cardも、日本居住者はオンライン申請ができなくなったという情報もあります。

以下、私が把握している内容をまとめました。

 

HSBC香港

通知&案内 一切なし:2023年11月頃から発動している模様
状況 ・オンラインからの新規投資は不可
・現地窓口ならばOK
・既存商品の維持やオンラインでの売却は可能
対象者 「あなたの居住国にはサービス提供不可」と表示
対象商品 株式や投信、ゴールド等(定期預金は除く)
Mastercard Debit Card アプリ内で「Apply Now」をクリックしても、「あなたの居住国には、このサービスは提供できません」と表示され申請不可。ただし、このMSGが表示されない顧客もいて、状況が錯綜している模様
社内周知 担当者は本件を認識していなかった様子

 

HSBCシンガポール

通知&案内 通知あり:2023年4月にメールにて通知
状況 ・オンラインからの新規投資は不可
・現地窓口ならばOK
・既存商品の維持やオンラインでの売却は可能
対象者 メール上は、「日本の居住者であるため」と明記
対象商品 株式や投信等(定期預金も含む)
Everyday Global Debit Card 状況不明
社内周知 担当者は本件を認識していなかった様子

 

今年の4月に上記メールをHSBCシンガポールから受け取った際は、シンガポール金融当局からの指導等に過剰に応えた結果だろうと考え、あくまでも局地的な処置と判断していました。

ところが、その後ブログ読者からの情報により、HSBC香港でも同様の制限が発動されたことを知り、これは、かなり大きな流れだとの認識に至りました。

しかも香港の場合はシンガポールと異なり、一切の通知や案内がなされないまま制限が発動しており、信じられないような話です。

なお、以下のブログには、情報の確からしさは不明なものの、制限対象となる国が一部記載されており、これによると、その対象国は、「日本、米国、豪州、カナダ、イスラエル」とのことです。

<引用先>

HSBC香港 速報!Masterデビットカードの発行について | G Confidence Inc. (g-confidence.com)

 

なぜ、このような制限が発動されたのか、私なりに原因を考察してみました。

おそらく公表されることのない原因を探ることは、「これから」を考えるうえで、重要になると思ったからです。

考えられる原因を思いつくまま、以下のとおり列挙してみました。

 

1.日本の金融当局からの要請

2.コストがかかって利益を生まない小口客の多い日本人の締め出し

3.OECDからの何らかの圧力

4.大陸周辺からの何らかの圧力

 

当初は、1や2の可能性も考えられましたが、対象国が日本だけでないという情報が正しいと仮定すると、1や2である蓋然性は低く、そうすると、3や4等の可能性を中心に考えなくてはなりません。

 

3.OECDからの何らかの圧力

対象国は、すべてOECD経済協力開発機構)の加盟国です。

そのOECDが、脱税やマネロンの温床になりがちなオフショア(非居住者)口座にさらなるメスを入れるべく、その代表的な金融機関であるHSBC香港やHSBCシンガポールに対して、圧力をかけたというシナリオです。

「株式や債券、投信などの投資商品をオフショアからオンラインで簡単に購入できることが脱税等を助長する」などと言われて、HSBCが屈したというシナリオは、十分に考えられるでしょう。直接の圧力はなくとも、HSBC自身が自ら、そのような流れを先取りしにいった可能性もあるかもしれません。

一方で、そのような理由なら、背景も含めてオフィシャルにアナウンスをすればよい話で、オープンにしたがらない(と映る)理由への説明としては弱いようにも思います。

 

4.大陸周辺からの何らかの圧力

HSBCは、その成り立ちからも帰属先が複雑な金融機関です。

現在本社は英国に置かれているものの、グループ利益の65%をアジア域内に依存しており、筆頭株主も中国の平安保険集団という、アジアに大きく軸足を置いたモデルになっています。

その筆頭株主である平安保険から、アジア部門を分離・独立させることを求める要求がつきつけられたのは、2022年5月の話でした。その要求は一旦は退けられたものの、平安保険を中心にHSBCのアジアビジネスを大陸に従属させていこうという大きな潮流があることは、間違いないと思います。

そして、平安保険の後ろには、大陸政府の存在も意識すべきで、そのような大きな流れの中から、今回の制限発動に至ったという可能性も否定できません。

この説では、制限の目的が何なのかという点を明確にすることはできませんが、対象国に大陸との関係が悪化している西側の国が並んでいることを考慮すると、この制限は序の口に過ぎず、その先にある様々な可能性まで想像してしまい、疑心暗鬼になってきます。

また、大陸の影がちらつくもうひとつの理由は、その制限の発動の仕方です。

前触れのない突然の発動や十分な説明をしないままの強硬な展開は、大陸当局のお家芸とも言えるやり口で、HSBCほどの立場の金融機関が、自身だけの意思と合理的な判断に基づいて行ったとは思えないような展開の仕方に見えるからです。

大陸からの何らかの大きな圧力により、発動せざるを得なかったということであれば、オープンにしたがらない(できない)姿勢も理解できます。

 

 

もちろん、3も4も可能性というレベルでの個人的な推測に過ぎませんが、いずれにしても、何らかの政治的な圧が原因となった可能性が高いのではないかというのが、私の見立てです。

そして、政治的な圧であるにせよそうでないにせよ、私にとってHSBCは、もはや信頼に足る金融機関ではなくなったと言わざるを得ません。

金融機関(特に海外の金融機関)は、レギュレーションがオープンで安定していて、安心できる先であることが最優先事項です。

それが、何の事前通知も説明もなく、騙し討ちのようなやり口で、サービスの制限を行い、顧客を疑心暗鬼にさせるというのは、その対極にあるやり方だからです。

 

オンラインを通じた投資ができなくなったという利便性の問題もさることながら、このような制限発動が背景説明もないまま、しれっと展開されてしまい、場合によっては、その先もあるかもしれないと危惧させるような金融機関に、資産を置いておくことのリスクをどのように考えるべきなのか。

私にとって、この「これからHSBCとどのように付き合っていくべきか」ということを考えるうえで、本件が非常に重要で残念なきっかけになったということだけは、間違いがありません。

今さらでしょうが、自由で開かれていたHSBCが、不自由で閉じた大陸風味の金融機関になってしまわないこと、そしてこれ以上の制限が発動されないことを願いつつ。

 

なお、本件に関しては、以下記事のコメント欄に読者の方からの情報が掲載されていますので、こちらもご参考まで。

aisan-bank.hatenablog.com