今回は、HSBCが発行する各種のカードを使って、日本のセブン銀行で残高照会を行った結果について、ご紹介します。
HSBCが発行するカードは、ATMカードやデビットカード、クレジットカードなど様々で、決済機能を提供する国際ブランドもVISA・マスター・銀聯など、それぞれ異なります。
今回は、現地通貨が日本円換算表示される残高照会を行うことで、これを実際に引き出した(交換した)場合のそれぞれのオトク度というか、基準レートに対し、どれだけ上乗せ(マークアップ)されているかを確認しようというものです。
使用したカードは、以下の7種類で、利用ATMはセブン銀行のATMとしました。
No | 発行銀行 | カード種類 | 国際ブランド | 通貨 |
① | HSBC中国 | ATMデビットカード | 銀聯 | CNY |
② | HSBC香港 | ATMカード | 銀聯 | HKD |
③ | HSBC香港 | Mastercard® デビットカード | Mastercard | HKD |
④ | HSBC香港 | Premierクレジットカード | Mastercard | HKD |
⑤ | HSBCシンガポール | ATMデビットカード | VISA | SGD |
⑥ | HSBCシンガポール | Everyday Globalデビットカード | VISA | SGD |
⑦ | HSBCシンガポール | Premierクレジットカード | Mastercard | USD |
この7種類のカードの残高照会結果を踏まえて、以下のとおり検証してみました。これにより、それぞれ、どんなマークアップとなっているかを知ろうというものです。
A. リアルレート・・・日本円換算された表示残高をオリジナル通貨の額で割ったもの
B. ブランド公表レート・・・各国際ブランドが発表している公表基準レート
C. オリジナルレート・・・各国際ブランドの公表レートの基となるオリジナルレート
Aのリアルレートとは、正に「交換レートはいくらになるのか?」を示したものです。実際の残高をお示しできれば、より臨場感があるのでしょうが、そこまで露出狂ではありませんので、レートを表示するだけとしています。
これに対し、Bの基準レートとは、各国際ブランドが、「我々の交換レートは、このレートを基準としますよ」と公表しているレートのことを言います。このレートに対し、カードの発行会社(銀行等)が、上乗せしてくるレートが、Aのリアルレートになるわけで、まずは、この差を確認したいというものです。
各国際ブランドのレートは、以下のサイトで確認しました。
また、Cのオリジナルレートとは、各国際ブランドが、Bの公表レートを決定する際のベースとしているレートのことを言い、これが最も「TTMなど素のレートに近い」と言えるものです。
ただし、残念ながら、「何をオリジナルレートとしてベースにしているか」を公表しているのは、私の知る限り、VISAのみで、VISAはECB(欧州中央銀行)の発表レートをベースにしていることを明記していますが、Mastercardや銀聯はここが不明のため、ブランクとしています。
※Mastercardや銀聯のレートが何を参考にしているかご存じの方は、是非教えてください。
なお、ECBのレートは、以下で確認しています。
いずれにしても、最も素となるレートがあり、これにいくらか上乗せしたものが、各国際ブランドの採用するレートとなり、これにさらにカードの発行会社等が上乗せしたものが、最終的な交換レートとなるわけです。
さて、以下が実際の検証結果になります(約1か月ほど前に行った検証です)。
スペースの都合上、全ての情報を記載することはできませんので、上記表との対比は、①などの番号をキーに見比べてみてください。
国際ブランド | 通貨 | A. リアル レート |
B. ブランド公表レート | A対Bマークアップ | C. オリジナルレート | |
① | 銀聯 | CNY | 19.82 | 19.82 | 0.00% | |
② | 銀聯 | HKD | 16.30 | 16.30 | 0.00% | |
③ | Mastercard | HKD | 16.37 | 16.46 | 0.51% | |
④ | Mastercard | HKD | 16.37 | 16.46 | 0.51% | |
⑤ | VISA | SGD | 90.73 | 93.06 | 2.56% | 93.91 |
⑥ | VISA | SGD | 90.73 | 93.06 | 2.56% | 93.91 |
⑦ | Mastercard | USD | 128.43 | 129.12 | 0.54% |
いかがでしょうか?
これを見ると、銀聯系カードは、CNYもHKDも銀聯の公表レート(北京時間平日11時に更新)どおりで、銀行などのカード発行会社がマークアップを取っていないことが判ります。もっとも、銀聯のレート自体が、何を基準とし、そこにいくらのマークアップを乗せているのかが不明なため、最終的なオトク度については、なんとも言えません。ただ、公表レートどおりというのは、事前に金額を確認できるため、安心感があります。
VISAとMastercard系のカードについては、SGDからの交換については、かなり割高になっていますが、USDやHKDについては、公表レート+0.5%程度であり、カード発行会社が取っているマークアップは、許容範囲といえるところでしょうか。
また、VISAについては、公表レートの基準となるECBレート(欧州時間平日16時に更新)も確認が可能なため、記載していますが、SGD→JPYという比較的マイナー通貨の交換となるため、対ECBレートとリアルレートでは、合計の上乗せ率は3.5%程度にもなりました。
いずれにしても、このような交換レートにおけるマークアップの額や構造は、常に不変というわけではありません(例えば、銀聯も以前は、発行会社のマークアップがあったように記憶しています)。
これをご覧いただいて、カードや通貨のオトク度を決めつけることは避け、マークアップの構造やイメージを理解することに留めるなど、参考としてお取り扱いいただければと思います。